トオルの母親はトオルが小学6年生のときに他界した。もともと心臓が弱く、亡くなる1年前からは入退院を繰り返していたので、子供ながらに覚悟ができていたのだろうか。母親が息を引き取った時も葬儀の席でもトオルは涙を見せなかった。父親の和明はしばらくはぼんやりとしていたが、それでも仕事を続け男手1人でトオルを育てていた。
千恵が初めて家に来た日のことを、トオルははっきりと覚えている。高校の入学式の日だった。その晩は和明の会社の近くのレストランで食事する約束だった。先に席について待っていると、和明が女性を連れてやってきた。綺麗な人だった。
(親父もまだ男だったんだ・・・それにしても、えらく綺麗な人を見つけたもんだ)
千恵は和明の会社で働く派遣社員で、和明より一回り年下だった。結婚を前提に付き合っている。トオルさえ許してくれれば、すぐにでも籍をいれたいと和明は言っていた。トオルはもう高校生だ。親の再婚に口出しする理由はなく、トオルと和明、それに知恵の3人の生活が始まった。
(・・・いや、俺だけが悪いんじゃない・・・親父だって・・・千恵さんだって・・・)
シャワーを止め、ぼんやりとそんなことを考えながら体を拭き、何度同じ事を考えるんだろうかと一人可笑しくなってきた。
(今はとにかく大学合格だ・・・そうすれば家を出られる。俺がいなくなれば、きっと親父と千恵さんはうまくいくんだ・・・)
風呂からあがると、居間のほうから話し声が聞こえてきた。千恵と和明の声だ。月に何度か千恵は家に帰ってくる。でも以前のように3人で暮らそうとはしない。できないのだろう。それはトオルにとっても同じ気持ちだった。
何を話しているかはわからないが、2人の話し声を聞くと胸が苦しくなる。
(・・・真理子先生が来るのは来週か・・・)
さっき別れたばかりの家庭教師にもう会いたくなるのはナゼだろうか?と考えながら、トオルは自分の部屋に戻っていった。
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やはり最初の構想とは全く違う方向に行ってしまってます・・・
でも筆の赴くままにお話を進めてみようと考えています。
千恵が初めて家に来た日のことを、トオルははっきりと覚えている。高校の入学式の日だった。その晩は和明の会社の近くのレストランで食事する約束だった。先に席について待っていると、和明が女性を連れてやってきた。綺麗な人だった。
(親父もまだ男だったんだ・・・それにしても、えらく綺麗な人を見つけたもんだ)
千恵は和明の会社で働く派遣社員で、和明より一回り年下だった。結婚を前提に付き合っている。トオルさえ許してくれれば、すぐにでも籍をいれたいと和明は言っていた。トオルはもう高校生だ。親の再婚に口出しする理由はなく、トオルと和明、それに知恵の3人の生活が始まった。
(・・・いや、俺だけが悪いんじゃない・・・親父だって・・・千恵さんだって・・・)
シャワーを止め、ぼんやりとそんなことを考えながら体を拭き、何度同じ事を考えるんだろうかと一人可笑しくなってきた。
(今はとにかく大学合格だ・・・そうすれば家を出られる。俺がいなくなれば、きっと親父と千恵さんはうまくいくんだ・・・)
風呂からあがると、居間のほうから話し声が聞こえてきた。千恵と和明の声だ。月に何度か千恵は家に帰ってくる。でも以前のように3人で暮らそうとはしない。できないのだろう。それはトオルにとっても同じ気持ちだった。
何を話しているかはわからないが、2人の話し声を聞くと胸が苦しくなる。
(・・・真理子先生が来るのは来週か・・・)
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