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官能小説もどき

フルタイムで働きながら官能小説家としてデビューも狙っているかみやなぎです。ひとまずの目標は毎日更新です。

「初めては先生と」9

千恵はこの数ヶ月でめっきり老けてしまった和明の横顔を眺めていた。腕枕をそっとはずし、和明の肩に唇を寄せた。

 「・・・ん、千恵、まだ起きてたの?」

 和明が目を覚まして、そっと千恵の髪をなでてくれた。

 「・・・うん。・・・和明さんの顔・・・見たくって・・」

 ううーん、と伸びをしながら、千恵のほうを向く。
 
 「・・・それなら、帰ってくればいいのに。あのことは気にしてないよ・・・
私も悪かったことだし・・・」

 何度も話し合ってきたことだ。小さく顔を振り。千恵は帰らない意思を示した。

 「・・・そうか・・・でも、私は千恵が帰ってくるのを待っているよ・・・」

 軽くキスをして、和明は眠りに落ちていった。

 千恵はそっと和明の下腹部に手をやる。そこは暖かく柔らかかった。

 (・・・今日もダメだった・・・)

 
 事の発端は和明が寝言で無くなった妻の名前を言ったことだった。寝言は本人の心の中の叫びではない、そんなことはわかっていた。でも、責めてしまった。忘れられるはずがない。愛していたひとなのだから。頭ではわかっていたけど、心は泣いてしまった。
  
 言葉に出してしまったことで、和明は知恵を抱けなくなってしまった。

 そして「あのこと」があった。あのせいでトオルは受験に失敗し、和明とはますます離れてしまった。

 なんて愚かなことをしてしまったのか・・・

 何度も話し合って、和明は知恵を抱こうとしたがやはり最後まではいけなかった。いや、和明の口や指では何度も絶頂に導かれるのだが、和明自身のモノではできなかった。

 月に2,3度こうして和明と会って、一緒に寝るのが唯一の夫婦関係を確かめる術になっていた。
 和明はトオルが大学に合格して家を出たら、また一緒に暮らそうと言う。そんなことできるだろうか。千恵の心は前の妻とトオルや和明に対する罪悪感で埋められているのだから・・・



 火曜の朝、大学に行く前の真理子にトオルからメールがきた。新しい「お願い」のメールだ。


 おはようございます。真理子先生。無事に金曜の模試も終わり、なかなかの好成績をおさめる事ができました。今日の家庭教師としてのお仕事が終わったら俺の家に泊まってください。これが「お願い」です。だからお泊りセット持ってきてね。


 ・・・やはりこうなってしまうのだ。メールを見ながら3分は固まっていた真理子は諦めとも後悔ともつかないため息をつきながら、旅行鞄に着替えを詰めたのだった。

 

  
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