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官能小説もどき

フルタイムで働きながら官能小説家としてデビューも狙っているかみやなぎです。ひとまずの目標は毎日更新です。

ラブ・ホテル ②

「ねえねえ、お風呂に大きなマットがあったよー何に使うのかな?」
 恥ずかしそうな顔をして緑が戻ってきた。
 「今日のレストラン、とっても美味しかったー、夜景も綺麗だったし。たけちゃんがああいうとこ知っているってちょっと驚いちゃった」
 「会社の先輩に紹介してもらったんだ、景色がいいからって」
  武志の横に座った緑はディナーで飲んだワインが回ってきたのか、武志にもたれかかってきた。
 「来年の誕生日もまたあそこにいきたいな…」
 少し熱っぽい緑の体温を感じながら、返事ができない自分にいら立っていた。
 日本にいたらいけるんだけど……

 一週間前、武志は上司に呼ばれた。仕事も順調、緑の誕生日にプロポーズしようと指輪も購入した。呼ばれた理由は今抱えている案件の進捗状況の確認だと思っていた。
 しかし武志が聞かされたのは一か月後に出発の急な海外勤務。二年は戻って来られない。
本当ならレストランで指輪を渡し、プロポーズする予定だった。日本にいるのなら緑は断らないだろう。四年付き合ってお互いの結婚観や仕事を続けるか、子供が欲しいか、家事や育児の分担など話し合ってきたのだ。いや、話し合ってきたからプロポーズできないのだ。

 「私、結婚しても仕事は続けるからね、それだけは認めてね」

 緑がだした唯一の条件が『仕事を続ける』ということだった。彼女は総合病院の看護師だ。今の職場は人間関係もよく勉強にもなり、やりがいもある、らしい。辞める気はない、と言い切った。そんな彼女に仕事を辞めて俺と一緒に海外へ行こう、と言えなかった。

 心配事があるとてきめん身体に現れてしまう。緑と一緒にベッドに入った武志は今日何回目かのため息をつきながら緑に誤った。
 「ごめん、今日は無理みたい」
 三回に一回はこんなことになってしまう。せめて緑の誕生日の夜、プロポーズの時だけは失敗したくなくてこの部屋を予約したのだが、この部屋のジンクスも武志の心理的圧迫には勝てなかったようだ。
 「ううん、いいよ、きっとワイン飲みすぎちゃったのね」
 柔らかいままの僕自身を緑は優しく手で包み込んでいる。
 「私、硬いのも好きだけどこういうふにゃふにゃの時も大好き」
 「そう?」
 「だって、たけちゃんのだから、なんてね」
 
 緑の指の動きが止まり、かすかな寝息が聞こえてきた。


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