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官能小説もどき

フルタイムで働きながら官能小説家としてデビューも狙っているかみやなぎです。ひとまずの目標は毎日更新です。

「初めては先生と」10

「先生を泊めたい?どうして?」

 二人で朝食を食べている時に、真理子先生を泊めたいといったときの和明の第一声だ。

 「あ、やっぱり終わるのが遅くなったら先生も帰るの大変じゃん。教えてもらう日の晩だけだよ。」

 険しい顔をしている父親の顔を見て、トオルはこれは無理目のお願いだったか、と少し後悔した。


 「・・・先生はなんて言ってるんだ・・・」

 (あれ?いい感触?)

 「今日、メールしたら、わかった、って返事くれたよ。」

 コーヒーをすすりながら、なにか考えているようだった和明だがため息をつきながらこう言った。

 「・・・先生が泊まってトオルの勉強をみてくれるっていうのなら、仕方が無いな・・・」

 「やったー、サンキュー親父!」

 ほっと胸を撫で下ろしたトオルだが、和明は

 「先生には一階の香織の部屋を使ってもらいなさい。しばらく掃除していないから、トオル、お前がちゃんと使えるようにしておきなさい。」

と付け足した。

 (・・・え?母さんの部屋じゃないか?)

 「え?いや、二階にも使っていない寝室あるだろ?あっち使えばいいじゃん」

 「あの部屋にはまだ千恵の荷物が残っているからダメだ。香織の部屋ならベッドはあるし、荷物も少ない。」

 香織の部屋と呼んでいるだけで、実際は母親の荷物は置いていなかった。数冊のアルバムとオーディオがあるぐらいだ。真理子先生がその部屋で寝ることに少し抵抗を感じたが、ここで父親に意見するとお泊り事態を反対されそうな気がしてきた。

 「・・・わかったよ。掃除しといたらいいんだな・・・」

 「そうだ、ちゃんとやっとけよ。私は仕事に行ってくる。」

 そいうと和明は飲みかけのコーヒーをおいて部屋を出て行った。

 (・・・母さんの部屋か・・・しばらく入ってもいないな。)

 
 トオルの隣の部屋が母と父の寝室だった。トオルに二階の部屋が与えてから、夜心配だという香織のために寝室にしたんだ、と後から父親に聞かされた。でも、香織の病状が思わしくなく、階段の上り下りがつらくなってきたため、一階に寝室が移された。でも、その部屋で母が寝ている日は少なかった。その時から入退院を繰り返していたからだ。

 部屋のドアを開けると、中にはシングルベッドとソファ、本棚がある殺風景な景色が目に入った。退院した母はこの部屋で寝起きをしていた。学校から帰ったトオルはまずこの部屋に入り、その日の出来事を母に話すのが日課だった。その頃はもう身体を起こすのが精一杯だった母は日中の時間を写真整理に費やした。本棚にはそのときのアルバムが数冊あった。

 (よく、ここで一緒にアルバムを見たなあ・・・)

 しかしトオルは母がいなくなってからは、アルバムを見ていない。本棚には薄っすらと埃が積もっていた。

 (・・・ん?アルバムの前のところだけ、埃が積もっていないな)

 トオルは一人この部屋でアルバムを眺める父親の姿を思い浮かべ、そして千恵のことを考えて胸が苦しくなった。アルバムにはいつまでの母が写っていただろうか?手にとって中を確かめたい衝動にかられたが、ぐっと我慢した。今、アルバムを見てしまうと、掃除ができなくなってしまう。

 (さ、掃除、掃除。)

 部屋の窓を開け、空気を入れ替えた。外は冬の日差しが満ちていて、寝不足気味のトオルには少し眩しかった。





  
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