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官能小説もどき

フルタイムで働きながら官能小説家としてデビューも狙っているかみやなぎです。ひとまずの目標は毎日更新です。

「三姉妹 次女佳美6」

頭が痛い・・・宮田さん・・・うう・・・ん

 手で宮田を探す。でも、手のひらが感じるのは冷たいシーツの感触だ。

 目を開けて彼の姿を探したいが、重い瞼は思うように動かない・・・

 声を出して呼ぶが返事はない。

 宮田さん・・・宮田さん・・・私・・・離婚するのよ・・・やっとあなたと一緒になれるの。ねえ・・・奥さんに話、してくれた?言ったわよね・・・私が辰夫くんと別れたら今度こそ結婚してくれるって・・・言ったわよね?

 返事はない。

 嘘よね?子供ができたなんて?もう奥さんとはしてないって、言ってたわよね?違うよね、ねえ・・・ねえ・・・・


 「ぐえ!がはっ!」

 胃の奥からこみ上げてくる。口から鼻から・・・涙も出てくる。

 でも宮田の声は聞こえない。

 つらいよ・・・寒い・・・あんなに熱いのが私の中にあったのに・・・どうして今はこんなに寒いの・・・




 「お姉ちゃん!大丈夫?ああ・・みー姉ちゃん!大変!よし姉ちゃん吐いた!」


 あ・・・聞こえた・・・でもこの声・・・真美子?


 「あら、大変。真美子、佳美を横向けにさせて、口を開けて、かきだして」

 「ええ~?マジで?もう、なんでこんなに飲んでるのよ!?」

 美登里姉さんの声も・・・・うっ・・・

 「げは!ごぼ!」

 目が開いた。同時に吐いた物の匂いが鼻を刺した。

 「え?何?・・・う!げぼうう」

 「よしねえ?気が付いた?ああ~!また吐いた!うげ~・・・」


 真美子の声が遠くなり、佳美はまた目を閉じた。吐いた物が顔や髪についていて気持ち悪いのだが、どんどん意識は沈んでいった。

 「・・・・大丈夫かしら・・・救急車呼んだほうが・・・・」

 
 あ・・・救急車・・・・奥さん・・・出血って・・・・流産したの?

 してないって・・・奥さんとはずっとしてないって言っていたのに・・・・


 「ううっ・・・うえ、えええん・・・・」

 声が出る。暖かい液体がこめかみを濡らしている。ああ、泣いてるんだ。私・・・


 「・・・よしねえ、泣いてるよ・・・泣き上戸?」

 「・・・泣くぐらいだから、息してるってことよね・・・大丈夫ね」

 誰かに何かを言ってドアの音がすると、室内は音がしなくなった。


 「う・・・・うぅん・・・」

 ホテルで一人取り残された後、どうしたのか佳美は考えていた。

 この頭の痛さや嘔吐したことからどこかで飲んだようだが、まったく覚えていなかった。
美登里と真美子の声が聞こえたから実家になんとか帰ってきたのか・・・


 その時、冷たいものが顔を覆った。誰もいないと思っていたので佳美は驚いたが、重い身体は動かせず、目だけを薄っすらと開いて室内を見回した。 


 誰かが濡れたタオルで顔を拭いてくれていた。蛍光灯の下で影になって顔はわからない。


 ただ、頬を撫でる指先が佳美に懐かしい、暖かいものを感じさせた。

 
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ちょっとペースをあげて更新していきます。
6月中には完成させたい・・・

それに見やすいように順番に表示されるように変えたいのですが
慣れてないので時間かかりそうです・・・

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「三姉妹 次女佳美7」

 どれくらい眠っただろうか。佳美はカーテンの隙間から刺す光がまぶしくて目を覚ました。寝ている間にパジャマに着替えさせてもらったようだ。シーツも綺麗なものに替えられている。髪は・・・すこし臭っていた。

 実家に帰ってきたと思っていたが、違っていた。ここは佳美と辰夫の家だった。見慣れたダブルベッドだが隣に辰夫はいない。

 離婚話をしただけでまだ具体的なことはなにも決まっていない。どちらが出て行くのか、引越しや、もろもろの手続き・・・

 いや、そんなことよりも今の佳美には宮田の妻が妊娠していたことがショックだった。

 もしかしたら連絡がきてるかも・・・・

 携帯を探したが、携帯どころかバッグもなかった。部屋の時計は7時半を指している。

 この状態で辰夫に会うのは嫌だったが宮田からのメールが来ているかもしれない、シャワーを浴びてすっきりしたい、なにより喉が渇いて我慢できなかったので仕方なく佳美はリビングに向かった。

 キッチンから声が聞こえた。

 「へえ~、じゃあ、その男の子と良い感じなんだ?」

 辰夫の声だ。

 「へへ、まあ、そんな感じかな?こんど海に行こうって」

 真美子だ。

 そっとドアを開けて覗くと、真美子が何か料理をしていた。美登里はいないようだ。

 「・・・おはよう・・・」

 声をかけると、真美子と辰夫が振り向いた。

 「あ!よしねえ!大丈夫?」

 真美子とはあのお祝いの会以来だ。あの件で遠藤と別れたと美登里から聞いた佳美は会うことや電話、メールも避けていたからだ。

 「・・・うん・・・ごめん・・・私・・・」

 ごめんというのは遠藤との事を謝ったつもりだったが、真美子は昨夜のことと思ったらしい。

 「も~、一体どれだけ飲んだのよ。前から酒癖悪いなあと思っていたけど。しかも一人だったっていうじゃない?下手したら死んでたよ?」

 「ごめん・・・覚えてなくて・・・」

 本当に覚えていなかった。ホテルから出て、駅近くのバーか何かのお店に入ったまでは覚えていたが、そこから記憶が途切れている。

 「も~!辰夫義兄さんが心配してよしねえに電話したらお店の人が出て、酔いつぶれてどうしようもないから来てくれって言われたの。お兄さんもその時家で飲んでいたから、私に連絡来て、みー姉ちゃんと二人で迎えにいったのに・・・」

 辰夫が佳美のバッグを持って入ってきた。

 「佳美、これ・・・だいたい汚れは落ちたと思うんだけど、ちょっとまだ乾いてないかも」

 差し出されたバッグは濡れて形が崩れていた。

 「・・・車の中でゲロ吐いたの・・・バッグの中に・・・限定モノのバッグが台無し!」

 真美子はぷりぷり怒って、コンロの上にある鍋をかき混ぜだした。

 「よしねえが飽きたら、そのバッグ貰おうと思っていたのに」

 辰夫がバッグの中から佳美の携帯を取り出した。

 「携帯は大丈夫だったよ。これ」

 差し出された携帯を受け取り、ロックを解除し、画面を見た。着信もメールもなかった。胸の中にズシンと重い何かが落ちてきたようだった。

 「・・・ありがとう・・・お風呂入ってくる・・・仕事行かなくちゃ・・・」

 冷蔵庫から水のペットボトルを取り出し、浴室に向かおうとする佳美に真美子が声をかけてきた。

 「おかゆ作ってるから食べてよ!私も店に行く時間だからもう出るけど、ちゃんとたべていきなよ!」


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「三姉妹 次女佳美8」

無反応な携帯を洗面台に置き、鏡に映った顔を見た。髪は乱れ、目は落ち窪み、全体的に浮腫んでいる。

 ひどい顔・・・

 ほんの半日前は女としての喜びを身体全身で感じていたのに、その数時間後には体中の体液が出る勢いで嘔吐している。涙もいっぱい出た。

 宮田さん・・・結局私は、あなたのなんだったんだろう?


 3年前に佳美に結婚を勧めたのは宮田だった。



 独身の君とのことを妻が疑っている。このまま今までのように付き合うことはできない。

 

 そう言われても佳美には別れる決心がつかなかった。


 別れたくない。どうすれば一緒にいることができるの?

 
 
 頭がくらくらする。まだアルコールが抜けていないようだ。




 そうだなあ・・・君が結婚すれば、妻も何もないと思うかも・・・・




 ああ・・・私はなんて馬鹿なことを・・・・

 その言葉を真に受けたのか、それとも苦しい状態から逃れたかったのか・・・多分どちらもだろう。婚活を始めて辰夫と知り合った。

 この人となら一緒に過ごせるかもしれない。穏やかで優しくて、暖かかった。もう宮田との苦しい恋には戻らないとその時は本当に思ったのだ。


 別れたくないから結婚する、から、別れたいから結婚した、に変わったのだ。


 もう不倫なんかしない。そう思ったのに、度重なる宮田の誘いを断ることができなかった。1度寝ると、後は歯止めが効かなかった。

 パジャマのボタンを外し、まだ張りのある胸を見た。昨日、エレベーターの中で揉まれた乳房にはまだ宮田の痕跡が残っているかのようだった。汗や唾液、中に出された精液・・・身体のあちこちに宮田が残っている。


 落としたくない・・・会いたい・・・でももう抱かれちゃいけないんだ・・・ 


 子供ができたと知ったことで、佳美の中であれほど好きだった宮田がどんどん遠くに感じていた。

 

 ペットボトルの水を一口飲み、シャワーを浴びるためにパジャマ脱ごうとしたとき、辰夫が入ってきた。

 「・・・佳美、いいかな?」

 半分露わになった胸を慌てて隠した。

 「何?」

 夫婦なのに、何度も辰夫に抱かれたのに、今日は、宮田に抱かれた後の身体は見られたくなかった。

 「朝、携帯が鳴ってね・・・悪いと思ったんだけど、取らせてもらった。仕事や昨日のことだったら困るからね・・・」

 電話があったんだ!相手は・・・・宮田なのか?

 「・・・会社の宮田っていう男性だったよ。昨日、打ち合わせの途中で、家族が急病になったから先に帰ったんだけど、残してきたから心配で電話したって言っていた。」

 「ああ・・・そう・・・」

 なんの用事だったのだろう?とても気になったが表情に出さないように注意した。

 「佳美は酔っ払って寝ていますって言ったら、今日は休んでくれってさ・・・・ゆっくりしなよ」

 佳美は少しほっとした。こんな顔で宮田に会って、何事もなかったかのように仕事ができるか不安だったからだ。

 
 「・・・わかった・・・ごめんね。酔っ払って迷惑かけて」

 昨晩の失態を詫びたつもりだった。もうじき離婚する女の世話などしたくなかっただろうと佳美は思った。


 「いや、そんなことはいいんだ・・・」

 辰夫は佳美の肩に手を置くと、そのまま佳美の身体を抱きしめた。


 「え?あ・・・辰夫くん?」



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「三姉妹 次女佳美9」

 離婚話を切り出す数週間前から佳美は辰夫との肉体的接触を避けていた。

 正確には美登里に辰夫と寝てくれるよう、頼んだ日からだ。

 抱きしめようとする辰夫の手をさりげなくすり抜け、いつも触れないようにしていた。辰夫も美登里とのことがあった日からは、もう夜を求めてくることもなくなっていた。

 それなのに今、辰夫は酔っ払って風呂も入らずにいた佳美を抱きしめている。

 「ちょ・・・ちょっと、辰夫くん・・・」

 少し動いて腕を振り解こうとしたが、しっかりと抱きしめられていて、佳美は腕の中から逃れることはできなかった。

 「・・・怖かったんだよ・・・」


 耳元で辰夫が呟いた。

 え?

 意外な言葉に佳美は驚いた。

 「・・・昨日、あのまま、佳美が死ぬんじゃないかって・・・意識はないし、いっぱい吐いていたし・・・目を覚まさなかったらどうしようって・・・・」

 「そんな・・・大げさな・・・」

 「大げさじゃない!」

 肩を掴まれ、ぐっと引き離された。辰夫の顔が正面に見える。

 「本当に心配したんだからな!」

 辰夫の目は充血していて、少し潤んでいた。瞼も腫れぼったい。

 泣いていたの・・・?

 「・・・でも、なんともなくて、良かった・・・今日はゆっくり休んだらいい・・・真美子ちゃん、ごはん作ってくれてるからシャワー浴びたら食べろよ」

 肩から手を離すと、辰夫は出て行った。

 

 浴室で佳美はまた泣いた。

 ヌル付いた身体と髪を洗い、宮田の体液が残っているところも丁寧に洗った。身体の表面の痕跡は洗い流せても、過去は消せない。宮田とのこと、辰夫を罠に嵌めたこと、美登里を利用したこと。全てのことを後悔して、シャワーに打たれた。


 
 浴室からでると、メールが届いていた。見ると宮田からだった。

 『佳美、二日酔いなんだって?今日はそんなに急ぎの仕事もないし、ゆっくり休みなさい。女房は切迫流産でしばらく入院することになったよ。だから近いうちに昨日の続きをしよう。中途半端だったから。また連絡するよ』

 決定的だった。この人は私とのことを何も、本当に何も考えていない。別れたら結婚すると言っていたのも、奥さんとはレスだったというのも。

 私のことを愛していると、言ったことも。


 泣きつかれてもう涙は出なかった。


 キッチンに行くと、テーブルの上に白い書類とお盆に載せられた一人用の土鍋があった。

 鍋を覗くと真美子が作ったのだろう、白粥だった。横に梅干が添えられている。

 白い書類は辰夫のサインと印鑑が押してあった。

 佳美はペンと印鑑を持ってきて、テーブルでサインをし、捺印をした。そしてその書類を端に置き、真美子の粥を口に運んだ。まだ暖かく、少ししょっぱい、と思った。


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「三姉妹 次女佳美10」

 引越しのトラックが行ってしまうと、真美子は大きなため息をついた。

 「あのさあ~、よし姉ちゃん・・・ちょっとは荷物少なくしようって思わなかったの?結婚前より増えているってことはわかってたじゃん」


 ダンボールが佳美の部屋には入りきらず、廊下にまで置かれていた。

 「ごめんごめん。少しずつ片付けるから。ちょっと辛抱して」

 離婚届けを辰夫に渡したあとの佳美の行動は早かった。辰夫と住んでいた部屋を出ることに決め、真美子に実家に帰ることを話した。

 事前に美登里から聞いていたのか、離婚のことを話してもさほど驚かず、よし姉の家なんだからいつでも戻ってきて、と言ってくれた。

 
 引越し業者に見積もりに来てもらい、日にちを決めた。

 仕事は辞めた。

 とても宮田の顔を見ながら仕事はできなかった。宮田にも同僚にも引き止められたが、佳美の決意は変わらなかった。

 「しかし、よし姉ちゃんも思い切ったことするよね。離婚して仕事も辞めて。次の仕事決まってないのに、これからどうすんのよ」

 社会人になってから言うことがいちいち偉そうになっている真美子の言葉を、佳美は半分嬉しい思いで聞いていた。

 「まあ・・・人生一休みの時期かな・・・って」

 甘えただった真美子が姉に説教するぐらいに成長したのだ。新しい彼氏もできたようだし、保護者としての役目は終わったのだと感じた。


 「なあに?このダンボール・・・」

 「あ、美登里姉ちゃん、手伝いに来てくれたの?」

 ダンボールを開ける手をとめて、玄関を覗くと美登里が立っていた。

 「来てくれなくても良かったのに。和也くんと由香ちゃんは?」

 「将彦さんが見てくれてる。真美ちゃん、今日は夕方から仕事だって聞いたから。佳美一人じゃあ片付かないでしょう?・・・・でも、ちょっと荷物多くない?」

 美登里も廊下に積まれたダンボール箱を見て呟いた。

 「やっぱり、そう思うよね?ほら、よし姉ちゃん、モノ多すぎだって」

 美登里はバッグから持ってきた軍手をはめながら真美子に言った。

 「はいはい、残りは私が手伝うから、あなたは早く仕事に行きなさい。山本君の車、停まっていたわよ」

 「え?うそ?も~早く言ってよ~。じゃ、行って来ます。よし姉ちゃん、廊下の箱は片付けてよ」

 バタバタとあわただしく出て行った真美子を姉2人が見送った。

 

 「・・・で?何か他に用があるから来たんでしょ?」

 美登里は軍手をはめたまま、バッグから茶色の封筒を出した。

 「これ、渡そうと思って。結局役に立てなかったし」

 中身は見なくてもわかる。佳美が美登里に渡したお金だ。


 「・・・借金、返さなかったの?」

 美登里が独身の時に借りた金をまとめて返済するという条件で、辰夫と寝てくれと頼んだのだ。

 「実はもうとっくに返していたの。あなたの話を聞いたら言い出しにくくて。辰夫さんと離婚してあなたがあの人と一緒になれるなら、って協力したけど・・・仕事も辞めたらこれからお金いるでしょう?」


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