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官能小説もどき

フルタイムで働きながら官能小説家としてデビューも狙っているかみやなぎです。ひとまずの目標は毎日更新です。

「三姉妹 次女佳美11」

「・・・私も簡単に引き受けなかったら良かった。そうしたら辰夫さんとは離婚せずに済んだのかもしれない。・・・ごめんね・・・佳美」

 佳美はだまって首を振った。

 「私こそ・・・あんなこと頼んでごめんなさい。離婚は美登里姉さんのせいじゃない。たぶんいずれ別れていたと思う・・・・」

 美登里はしばらく佳美の俯いた顔を見ていたが、ため息を一つつくと話し始めた。

 「・・・・そうかしら。離婚の理由に辰夫さんの浮気をでっち上げたかったのはわかるけど、相手に私を選んだところで佳美の迷いを感じたわよ。まあ、お金払って他人に頼んだらあとで強請られるかもって考えたのかもしれないけど・・・知らない女を抱いて欲しくなかったのかなって思った」

 どうせ別れる夫、誰と寝ても関係ないはずなのに、佳美は他人の女には頼みたくなかった。自分の不倫をばらさずに、辰夫の不貞を理由に離婚したかったための手段だった。

 何も言わない佳美に美登里は封筒を手に押し付けて言った。

 「じゃ、早く片付けようか?片付いたら佳美の人生再出発パーティーでも開こう。真美子の新しい彼も呼んで。あ、佳美はしばらく禁酒ですよ」

 もちろん、あの泥酔した夜からアルコールは一切摂っていない。

 「わかってるよ。今も禁酒中です」

 廊下に積まれた箱を開けていく。引越しを急いだのでモノの分別をしないまま箱につめてしまった。本や手紙、写真や旅行先のパンフレット。宮田とのものは先に処分したのでもう無いが、辰夫との写真などはそのまま持ってきてしまった。

 「・・・ところでさあ、佳美、辰夫さんはどうしてるの?」

 アルバムに気をとられていた佳美は美登里の突然の問いかけに驚き、アルバムを落としそうになった。

 「佳美~、片付けする時にアルバムなんか見ていたらいつまでたっても終わらないよ。で、辰夫さんは?」

 「え?あ、辰夫くん?」

 
 サインした離婚届けを辰夫に渡した後は、あまり話をしていなかった。引越しも日にちだけ伝え、荷造りも一人でした。

 「あの部屋にしばらくは住むみたい。会社に近くて安いところが見つかったら引っ越すって言っていたけど」

 「・・・そう。結局、離婚の理由は話したの?」

 離婚の理由は・・・話していない。「性格の不一致」というのが表向きの理由になるが、辰夫は佳美から切り出した離婚の理由を一切聞かなかった。

 ただ、「そうか」と言っただけなのだ。

 「もしかしたら・・・知っていたのかしら・・・」

 美登里がぼんやりとした声で呟いた。

 知っていた。宮田との付き合いを?美登里を関係させたことを?

 手に持っていたアルバムを箱に戻してまた封をした。これは落ち着いたら整理しよう。今はまだ見てはいけない思い出なのだ。

 「・・・そうかもね。でも、考えても仕方ないわ。もう離婚したんだし」

 そう、もう私の人生とは関係ない人になったのだ・・・そんなことわかっていたはずなのに。引越ししたからか、アルバムを見てしまったからか、なぜか、「関係ない」と思ったら無性に「寂しさ」を感じた。


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「三姉妹 次女佳美12」

 引っ越してきて1ヶ月が経った。廊下にあった箱はすべて片付けられたが、部屋にはまだ数個のダンボールは封も開けられていない状態で佳美の部屋に積まれていた。

 宮田からは連絡はない。かつての同僚から時々メールが届き、そのなかに宮田の子供が男の子だということが書かれていた。不思議なことにそんなメールを見ても、もう佳美は何も思わなくなっていた。ただ、宮田の妻が元気であるということに安心した。

 佳美が連絡を待っていたのは辰夫だけだった。なぜ、別れた夫からのメールを待っているのか。だが彼からはほとんど電話やメールはなかった。離婚しても手続きなどで話す事があると思っていたのだが、実際には二人に子供はいなくて、仕事もそれぞれしていたのでこれといって事務手続きで会うことはなかったのだ。

 メールが来ないかと携帯を弄り、ベッドに横になったまま一日が過ぎる。仕事を辞め、真美子と2人で暮らしているが、食事はそれぞれで作っていたし、真美子は不規則な勤務であまり顔を合わせることがなかった。

 なにもする気が起きない。食事を作ってまで食べたいとも思わない。新しい仕事を探す気力もない・・・

 私、何やってるんだろう・・・

 離婚を言い出したのは、宮田と一緒になれると信じていたからだが、辰夫が離婚を承諾した直後に宮田の奥さんが妊娠していることを知った。宮田が離婚する気がない、ということも。

 辰夫と別れることだけが残ってしまった。嫌いで別れたわけではない。宮田を失い、その上に辰夫も失うことになって後悔だけをかみ締めている。

 「よし姉ちゃん!いつまで寝てるのよ!」

 ドアが乱暴に開けられ、真美子の大きな声が部屋に響き渡った。

 「あ・・・真美子、今日は休みだっけ?」

 相変わらずベッドで携帯を弄ってる佳美を見て真美子はますます大きな声を出した。

 「も~!今日は明日の食事会の買出しに行くって約束したじゃない。忘れたの?」

 そういえば、前に美登里が「離婚パーティー」のようなものをしようと言っていたような・・・

 「買出し、今日だったっけ?」

 起き上がって携帯を見た。もう昼前だった。メールはなかった。

 「よし姉ちゃん~、先週言ったじゃん。今度の土曜日の夕方からするって。それ、明日。今日は金曜日ですよ、わかってる?」

 毎日、家に引きこもってだらだらと過ごしていると曜日の感覚がなくなってしまうらしい。

 のろのろと立ち上がり着替える用意をした。

 「で?明日は誰来るの?将彦さんも?」

 「みー姉ちゃんの話では来るみたいよ。ちびっ子たちも。あと山本くんと・・・あ、みー姉ちゃんが明日伝えたいことがあるって言ってたよ。なんだろうね?」

 なら、いつものメンバーだ。将彦さんが来るなら少しビールを多めに用意して・・・あと、辰夫くんには・・・

 そこまで考えて、佳美は辰夫はもうここには来ない人になったんだ、と実感した。

 ああ・・・駄目だなあ。

 いつまでも辰夫を考えている自分自身に嫌気が差してきている。


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相変わらず、進みが遅くてごめんなさい。
でも、6月中には終わらせたいので、これから早いペースで更新します。
あれ?話飛んでる?と思われたら、前回の話から読んでいただけると
嬉しいです。





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「三姉妹 次女佳美13」

 「ああ、山本くんも来るわよ。よし姉ちゃん、もう余計なこと言わないでよ」

 前の彼氏のことを言っているのだろう。

 「わかってるわよ。それに私は禁酒中ですから」

 あ、そうだったか、と真美子が言った。

 「禁酒中の人に悪いんだけど、よし姉ちゃんにはお酒の買出しお願いするね。私は山本君と食材を買ってくるから」

 「え?山本君にも手伝わせるの?悪くない?」

 二人で休みを合わせたのだろうか?しかし、今家に車はない。一人でお酒を買って持って帰れるか心配だった。

 「車だしてもらおうと思って。悪くないよ。明日はご馳走するんだもん。よし姉ちゃんには助っ人呼んでいるから。もう前で待ってるから早く用意してよ」

 助っ人?美登里姉さんかな?そう思いながら佳美はもう1度携帯を見た。メールは無かった。


 「ねえ・・・よしねえ、いつも携帯握ってるけど、誰かのメール待ってるの?」

 真美子が佳美の手の中の携帯を見つめた。

 「あ、ああ・・・、うん、そう。でも、来ないもんよね・・・仕方が無いんだけど・・・ついつい見ちゃうの」

 「ふ~ん、メール来ないんだったら電話すればいいじゃん。会いたいんでしょ?」

 佳美は、真美子は今幸せな恋愛をしていると感じた。会いたいと言って断られる怖さを知らないのだ。佳美から別れを告げた相手に、また会いたいとは言えなかった。

 「なかなか・・・そうもいかなくてね・・・さあ、買出し行ってくるわ。真美子は何か飲みたいものある?」

 「う~ん・・・日本酒かな?ちょっと辛目の・・・」

 「真美子、日本酒飲めたっけ?」

 ついこの間まで学生だったのに。

 「山本くんが好きでね。最近、ちょっと味がわかるようになったの」

 「へえ~、じゃあ山本くんにも日本酒でいいわね?真美子ももう出るの?鍵ちゃんとかけておいてよ」

 玄関で靴を履きながら、真美子に言った。

 「わかった。私、今日は山本くんと外で食べるから。よし姉ちゃんもゆっくりしてきていいよ~」

 「ゆっくりって言ったって、美登里姉さん、夕方には帰らないと駄目でしょう?私は今日も一人でごはんかな~」

 一人ならたぶん今日も食べないだろうな、と思いながら玄関を開けた。

 「でも、そうならないと思うよ~」

 真美子が悪戯っぽくつぶやいたことが、玄関の前に停められた車を見てわかった。

 「・・・え?・・・どうして?」

 「二人でデート、楽しんでおいでよ。遅くなっても心配しないからね~」

 その車は辰夫は乗っていた車だった。運転席には本人が乗っている。

 「ちょっと、どういうこと?」

 「よし姉ちゃんがやつれてきてるの、心配してるんだよ・・・美登里姉ちゃんも私も。辰夫義兄さんも。いいじゃん、気分転換に二人で出かけてきなよ。あ、ちゃんとお酒は買ってきてね」

 真美子は佳美の背中を押すと、じゃあ、楽しんできてね、と言い残し、ドアを閉めた。

 
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もう少し!
頑張るぞ~

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「三姉妹 次女佳美14」

「久しぶり・・・」

 車に近づくと、窓が開いて辰夫が声を掛けた。

 「1ヶ月?もっとかな・・・元気だった?」

 佳美が話しかけると、辰夫は助手席に座るように促した。

 「え・・・でも・・・」

 躊躇する佳美に辰夫は言った。

 「買い物行くんだろ?真美子ちゃんに頼まれたんだ。乗れよ」

 仕方無しにドアを開けて身体を滑り込ませた。 

 メールは待っていたが、こんな形で会うことになるとは。しかも近くの店に行くつもりだったのに化粧もしていない顔だ。かといって、ここで帰ってしまったらもう二度と辰夫には会えないような気がした。

 車は滑らかに走り出した。

 「・・・ちょっと痩せた?」

 辰夫は前を向いたまま話しかけた。

 「あ・・・うん、痩せたかな」

 実際、あの泥酔した頃にくらべたらかなり痩せていた。ほとんど食べていないのだから仕方が無い。

 「真美子ちゃんや、美登里さんが心配していたよ。部屋に閉じこもったまま出てこないし、食事もしてないみたいだって。そうなの?」

 佳美は自分の知らないところで真美子や美登里が辰夫と話していたことに驚いた。

 「え?お姉ちゃんと話したの?」

 「ああ。1週間ぐらい前に電話がかかってきて」

 「停めて」

 「え?」

 佳美はシートベルトを外し、ドアを開けかけていた。

 やっぱり乗るんじゃなかった。

 「停めて。降りる」

 「え?買い物行くんだろ?ちょ・・・危ない」

 車が路肩に止まったと同時に外に出ようとした佳美の腕を辰夫が掴んだ。

 「ちょっと、待てよ。まだ何も話してないだろ?」

 「嫌、私は話すことなんてない。美登里姉さんと真美子が何を言ったのか知らないけど、私はちゃんとやってるから。心配しないで」

 振り切って逃げたかった。会いたかったけど、やっぱり会えない。会わせる顔がない、といったほうがいい。長い間裏切ってきて、自分から別れて、でもまた会いたいなんて許される訳が無い。

 「ちゃんとしてないから、こんなに痩せてるんだろ!お前、俺が何にも知らないとでも思ってんのか?」


 佳美の腕を掴む手に力が入る。あまりの痛さに佳美は悲鳴を上げた。

 「痛い!辰夫くん!」

 「あ・・・ごめん。でも、手を離すと佳美、また降りようとするだろ?」

 掴んだ手の力が少し緩んだが、それでもまだ痛かった。

 「う・・・降りない、降りないから、手を離して・・・」

 ようやく手を離した辰夫は、乱暴に車を発進させた。

 「・・・シートベルト、締めて」

 佳美は黙ったまま、ベルトを締め、掴まれて赤くなった腕をさすった。

 
 どうして辰夫が怒っているのか、だいたい想像がつく。佳美はきっと美登里が辰夫に全てを話したのだろうと思った。
 
 できれば知られたくなかった。知らないままで時間が経てば、笑って会えるような気がしたのだ。

 「今日は・・・少し俺に付き合ってくれ・・・」

 辰夫の横顔を見ながら、佳美は小さく頷いた。
 

 車は町を抜け、郊外のラブホテル街に入っていった。

 
 「ねえ・・・辰夫くん・・・どこに・・・」


 佳美が不安げに聞く間に車はホテルの地下駐車場に入ってしまった。

 エンジンを切るとさっさと辰夫は降りてしまった。

 助手席のドアを開けられる。

「今日はちゃんと話しておきたいことがあるんだ。降りて」

 薄暗い駐車場に辰夫の声が響いた。

 

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もう少しだ!
頑張れ、私(笑)
 

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「三姉妹 次女佳美15」

 辰夫は黙ったまま部屋を選び、エレベーターに乗った。その後を佳美はついていく。

 怖い・・・

 きっと責められて、罵られるのだろう。だからわざわざホテルに入ったんだ・・・もしかしたら殴られるかも・・・

 でも、辰夫をそこまで追い詰めたのは佳美自身だ。殴られて責められることで辰夫が許してくれるなら、いや許してくれなくてもそれは受けなければならない、と考えていた。

 「入って・・・」

 部屋のドアが開けられ、中に入れられた。

 「話って・・・」

 ベッドルームに入ったところで、佳美は辰夫に聞いた。だが、辰夫は答えずに佳美の身体を引き寄せ、抱きしめたのだ。

 「・・・え?、辰夫くん?」

 予想外の辰夫の行動に、佳美の身体はこわばったままだ。肩に当たる吐息が熱く感じる。

 「・・・なんで、こんなに痩せてるんだよ・・・」

 背中から腰にかけて、大きな手が撫でてくる。愛撫などではない。確認をしているような触り方だ。

 「俺と別れたら、幸せになるんじゃなかったのかよ・・・」

 声が震えている。背中に回された腕が佳美を抱きしめる。

 「辰夫くん・・・」

 佳美の腕は辰夫を抱きしめることができない。身体の両脇に力なく下がっていた。

 「・・・俺じゃ、駄目なのか?やっぱり、俺じゃ佳美を幸せにできないのか?」

 一瞬にして心が固まった。

 「・・・そんな・・・違うの・・・私が悪いの。辰夫くんのせいじゃない・・・」

 力ない声は辰夫に聞こえただろうか。

 「辰夫くんは、悪くないの。私が・・・私が、悪いの・・・」


 何度この言葉を心の中で呟いただろう。辰夫の背中にそっと手のひらをのせる。この前抱きついたのはいつだったか・・・その頃に比べたら辰夫の背中は小さくなっているように感じた。

 不意に辰夫が顔を上げ、佳美を見つめた。微かに目が潤んでいるように見える。

 「もう、謝らなくていいから・・・俺こそ・・」

 顔か近づいてきて、唇が重なった。背中の手が力強く佳美を抱きしめるので、離れることができない。

 私・・・キスする資格なんてないのに・・・

 柔らかい唇、懐かしい感触を感じると、涙が一筋頬を伝った。 

 2人の舌が絡み合う頃には、佳美の手はしっかりと辰夫の背中を抱きしめていた。

 「泣いても、止めないからな」

 耳元で囁かれて、佳美は黙って頷くだけだ。

 そっとベッドに座らされ、そのまま押し倒された。久しぶりに感じた辰夫の重みに少し戸惑い、そして全てを受け入れようと決めた。


 シャツをたくし上げられ、脱がされる。その時に部屋の照明が付いたままになっていることに気が付いた。

 「辰夫くん・・・暗くして・・・」

 宮田とは明るいままでも平気だったのに、辰夫には裸を見られるのが恥ずかしく、いつも暗くしていたのだ。今も恥ずかしい。それに他の男の痕跡に気づかれそうで怖かったのだ。

 「駄目だ。今日はちゃんと見たい・・・ちゃんと目を見て、話さないと」

 一体何を話すというのか。明るい部屋のベッドの上で、佳美は1枚づつ衣服を剥ぎ取られていった。


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6月中に終われるかなあ。
ぎりぎりっぽいです(泣)
頑張ります。

 

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