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官能小説もどき

フルタイムで働きながら官能小説家としてデビューも狙っているかみやなぎです。ひとまずの目標は毎日更新です。

「三姉妹 次女佳美10」

 引越しのトラックが行ってしまうと、真美子は大きなため息をついた。

 「あのさあ~、よし姉ちゃん・・・ちょっとは荷物少なくしようって思わなかったの?結婚前より増えているってことはわかってたじゃん」


 ダンボールが佳美の部屋には入りきらず、廊下にまで置かれていた。

 「ごめんごめん。少しずつ片付けるから。ちょっと辛抱して」

 離婚届けを辰夫に渡したあとの佳美の行動は早かった。辰夫と住んでいた部屋を出ることに決め、真美子に実家に帰ることを話した。

 事前に美登里から聞いていたのか、離婚のことを話してもさほど驚かず、よし姉の家なんだからいつでも戻ってきて、と言ってくれた。

 
 引越し業者に見積もりに来てもらい、日にちを決めた。

 仕事は辞めた。

 とても宮田の顔を見ながら仕事はできなかった。宮田にも同僚にも引き止められたが、佳美の決意は変わらなかった。

 「しかし、よし姉ちゃんも思い切ったことするよね。離婚して仕事も辞めて。次の仕事決まってないのに、これからどうすんのよ」

 社会人になってから言うことがいちいち偉そうになっている真美子の言葉を、佳美は半分嬉しい思いで聞いていた。

 「まあ・・・人生一休みの時期かな・・・って」

 甘えただった真美子が姉に説教するぐらいに成長したのだ。新しい彼氏もできたようだし、保護者としての役目は終わったのだと感じた。


 「なあに?このダンボール・・・」

 「あ、美登里姉ちゃん、手伝いに来てくれたの?」

 ダンボールを開ける手をとめて、玄関を覗くと美登里が立っていた。

 「来てくれなくても良かったのに。和也くんと由香ちゃんは?」

 「将彦さんが見てくれてる。真美ちゃん、今日は夕方から仕事だって聞いたから。佳美一人じゃあ片付かないでしょう?・・・・でも、ちょっと荷物多くない?」

 美登里も廊下に積まれたダンボール箱を見て呟いた。

 「やっぱり、そう思うよね?ほら、よし姉ちゃん、モノ多すぎだって」

 美登里はバッグから持ってきた軍手をはめながら真美子に言った。

 「はいはい、残りは私が手伝うから、あなたは早く仕事に行きなさい。山本君の車、停まっていたわよ」

 「え?うそ?も~早く言ってよ~。じゃ、行って来ます。よし姉ちゃん、廊下の箱は片付けてよ」

 バタバタとあわただしく出て行った真美子を姉2人が見送った。

 

 「・・・で?何か他に用があるから来たんでしょ?」

 美登里は軍手をはめたまま、バッグから茶色の封筒を出した。

 「これ、渡そうと思って。結局役に立てなかったし」

 中身は見なくてもわかる。佳美が美登里に渡したお金だ。


 「・・・借金、返さなかったの?」

 美登里が独身の時に借りた金をまとめて返済するという条件で、辰夫と寝てくれと頼んだのだ。

 「実はもうとっくに返していたの。あなたの話を聞いたら言い出しにくくて。辰夫さんと離婚してあなたがあの人と一緒になれるなら、って協力したけど・・・仕事も辞めたらこれからお金いるでしょう?」


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