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官能小説もどき

フルタイムで働きながら官能小説家としてデビューも狙っているかみやなぎです。ひとまずの目標は毎日更新です。

やりたい盛り 3

「あら、初めてかしら?」

 微かにいい匂いがした。シャンプーの香りだろうか。

「先週からこちらの店に移動になった相田といいます。新入社員さん? かしら」
「え? あ、ああ、はい。岡本です」

 背は陽一より少し低いくらいか。ちょっと見上げるような視線にどきどきしてしまう。

「ありがとう、じゃあ、お渡ししてきますね」

 陽一の手からするりと袋を受け取ると、奥で待っている客のところへ行ってしまった。

 タイトスカートの裾から伸びている脹脛が白い。 後ろ姿にも見とれてしまった。

 新しいパートさんかな……

 大型スーパーなので人の出入りも激しい。それに先月に配属された陽一にはまだどの部門に誰がいるのか把握していなかった。


「あ~、その人、違う店から配置換えになった人よ。え~っと、本社の近くに中くらいの広さの店あるじゃん。そこから来たのよ」

 てんぷらが一段落したのか、作業部屋にもどった時、遠藤は今度はとんかつを揚げていた。

「パートで配置換えなんてあるんすか?」

 社員ならおおよそ二年ごとに定期的な人事異動があるが、パートにもあるのかと陽一は聞いてみた。

「普通はないよね~。パートなんて家から近いっていう理由で勤務先選ぶんだから。ああ、でも相田さんはもと社員じゃなかったかな? サービスカウンターの仕事もわかってるし、この間辞めた人の替わりに新しい人が来るまでの間って聞いたよ」

 なら、ずっと働くわけじゃないんだな。両手に袋を提げた相田の後ろ姿を思い出した。

 細い、とは言えないがくびれた腰と大きなお尻が印象に残っている。それにはちきれそうな胸……。あれは多分Fカップかな、服のサイズが合っていないのか。祐美のBカップと比べてしまう。

「岡本くん、でも相田さん、結婚してるからね~」

「え?聞いてないし」

 人妻か、色っぽいはずだ。

「ちょっと、落胆の色が顔にでたよ」

 けらけらと笑う遠藤。どうも陽一はこの遠藤にからかわれているような気がする。

「いやいやいや、そんなことないっすよ。それに俺、ちゃんと彼女いますから、人妻になんて興味ないです」

 揚げたてのとんかつの匂いが鼻につく。油の匂いがつくから嫌なんだよな~と感じた陽一だが、あの色っぽい相田の姿をこれから見ることができるなら、ここの仕事も悪くないかと思っていた。

「今日、夕方から歓迎会でしょ? 新入社員と一緒に四月から来たパートさんの紹介もするんじゃないかな」
 
 そうだった。今日はこの店に配属された新入社員の歓迎会だった。大学の時のような飲み会なら楽しいだろうが、仕事の飲み会は気が重い。気難しそうな店長や口の悪いチーフ、おせっかいなおばさんパートに絡まれるのだから。

 でも、相田さんみたいな人が隣にいたら、ちょっとは楽しいかもしれないな。

「岡本、昼とっていいぞ~」

 大きな声を出しながらチーフが戻ってきた。

「あ、すいません。じゃあ、行ってきます」

 遠藤とチーフに挨拶して、出て行こうとしたら、怒鳴り声が背中から聞こえた。

「おい! 岡本! 注文の弁当、数合わないぞ!」

「え?」


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