「お~い、岡本!俺休憩行って来るから、一時間売り場頼むぞ。それと、注文の弁当、サービスカウンターから連絡あったら持っていってくれよ」
大きな声で陽一に話すと、チーフの宮崎は事務所に入っていった。
「…ふあ~い」
チーフがいないことを良いことに陽一は気の抜けた返事をした。それを横にいるパートの遠藤に聞かれた。
「あらら、岡本君、そんな返事チーフに聞かれたらまた怒鳴られるわよ」
五十少し過ぎた勤続十年目のベテラン遠藤は話しながらも手は忙しく動かして、てんぷらを揚げていた。ゴールデンウィークの半ばということもあり、店は忙しかった。
「…はあ、もう四時間も立ちっぱなしっすよ?俺のほうが先に出勤だったのにどうして十時出勤の宮崎さんが先に昼休みとるんっすか?もう訳わかんね~」
陽一は立ち仕事でパンパンになった脚を屈伸させ、太ももを叩いた。
「あはは、そのうち慣れるよ~。あ、揚げたのパックに詰めていって」
「ふぁ~い」
ここは郊外にある大型ショッピングセンターのなかにあるスーパーマーケットだ。陽一は先月から新入社員としてこの店に配属された。部門は希望とはちがって惣菜部門になった。
「俺、本当は本社にいきたかったんですよね…いや、店舗は大事ですけど…」
愚痴をいっても始まらないが、それでも誰かに聞いてもらわないとやってられなかった。
「あはは!一年坊主がいきなり商品部なんてありえないし。新入社員は社長の息子だって店に配属だよ!」
豪快に肩を揺らして笑う遠藤は惣菜よりも精肉が似合うと、陽一はいつも思っている。
その時、エプロンのポケットに入っている携帯が鳴った。店内連絡用の携帯だ。
「はい、惣菜部、岡本です」
油の付いた指を拭きながら、電話にでると、サービスカウンターからだった。
注文の弁当を持ってきて欲しいという内容だった。
「遠藤さん、弁当、SCに持っていってきますね」
「りょ~かい。今日は注文多いから間違わないようにね」
連休で出かける人が多いのか、今日は数組からの注文があった。陽一は注文票と弁当の種類、個数を確認してサービスカウンターに持っていった。両手に大きな袋を提げ、店内を歩くと家族連れやカップルが多い。大型ショッピングセンターで映画館や専門店も入っているので休日は人が多くなる。
「お待たせしました。ご注文のお弁当です」
サービスカウンターの人間もいつもの倍の人数がいる。その中で一人の女性店員が陽一
に気づいた。
あれ?こんな人、いたかな?
柔らかいパーマがかかった髪を後ろに一つにまとめていて、制服のブラウスの胸部分がはちきれそうになっている。
胸、でか!ボタン飛ぶんじゃないか?
「ありがとうございます。このままお渡しすればいいですか?」
胸に視線を奪われていた陽一は、はっと我に返り、相手の顔を見た。
「あ、ああ、そうです」
二重の切れ長の目がまっすぐ陽一を見ていた。
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