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官能小説もどき

フルタイムで働きながら官能小説家としてデビューも狙っているかみやなぎです。ひとまずの目標は毎日更新です。

「三姉妹 三女 真美子4」

ラブホテルから外に出るとどうして太陽は橙色に見えるんだろう?

 ホテルで一晩明かした真美子は隣で手を繋いでいる遠藤に言った。

 「そりゃ、ラブホの部屋が暗いからだろ。暗いところから明るいところに出ると目がおかしくなるじゃん」

 そうだろうか?真美子は違うと思う。ベッドの上で沢山愛し合って、いっぱい逝って、身体も心も満足しているから、というのと、ラブホを出ると愛する人と別れなければ鳴らないからだ。寂しさが視覚をおかしくするのだ。

 そんな真美子の気持ちを察したのか、遠藤がぎゅっと肩を抱いた。

 「そんな顔すんなよ。ちゃんと会えるって。メールも毎日するし、電話もするよ」

 「ん・・・」

 明日は遠藤も真美子も入社式だ。お互いに頑張ろうぜ、といって遠藤と別れた。

 新しい環境への不安、遠藤とのこと、それに家のこと・・・4月は悩み事が多くなる月なのか。真美子は遠藤と会っている間、サイレントにしていた携帯を見た。

 (ああ・・・やっぱり・・)

 姉の佳美からメールと着信が入っていた。

 (真美子、朝に連絡したんだけど繋がりませんでした。メール見たら連絡ください。今日は私は仕事だから昼にまた電話します。)

 話の内容はきっと姉妹で集まる日程を決めるためだろう。真美子が就職できたことを2人の姉は喜んだ。それこそ飛び上がらんばかりに。両親がいない分、姉たちは・・・特に佳美は真美子の親のように世話を焼き、心配し、金銭面でも助けてくれた。そんな佳美に真美子も感謝はしているが、時折、過干渉になることが悩みの種だった。

 もう、仕事も決まったんだから、大人として扱って欲しいのに・・・

 佳美には(今から家に帰る)とだけメールした。

 日曜の夕方の電車は、愛された後の疲労感を残した真美子をゆっくりと眠りに誘っていった。




 けだるい身体を何とか歩かせて、家に着いた真美子はガレージに佳美の車が停まっている事に気が付いた。

 とたんに家に入るのが憂鬱になった。小言を言われるのがわかっていたからだ。

 「・・・ただいま・・・」

 ブーツを脱ぐ間もなく、奥から佳美が現れた。

 「真美子、昨日からどこ行ってたのよ!心配したのよ!」

 予想通りの言葉だ。

 「・・・遠藤君と会っていたの・・・」

 「遠藤って?あの大学の同級生の?」

 声を出して返事するのも面倒だったので、頷くだけにした。

 「真美子・・・前にも言ったわよね?お付き合いしてもいいけど、帰るのは遅くならないでって。それなのに昨日は家にも帰ってないじゃない。外泊したの?」

 「よし姉ちゃん、うるさい。もう私も大人なんだから、大丈夫よ・・・」

 いつもならここで大声を張り上げて喧嘩になるのだが、今日はさすがに疲れていてそんな気力はなかった。

 「もう・・・」

 不思議ことに佳美もそれ以上は何も言わなかった。
 よし姉ちゃんも疲れているのかな?

 リビングのソファの上に見覚えのあるバッグが置いてあった。昨日の朝、佳美によく似た女が持っていたものと同じものだ。

 「あれ?やっぱり昨日見たの、よし姉ちゃんだったんだ・・・」

 「何のこと?」

 「昨日、みなみ駅のファミレスでご飯食べてる時にこのバッグ持ってるよし姉ちゃん見たよ。いいなあ~これ買えたんだ~」

 真美子はただバッグを羨ましく思っただけなのだが、佳美はなぜか怖い顔をしていた。

 「あんなところで何していたのよ!それに見たのは私じゃないわよ。私、昨日は会社で休日出勤だったもの。人違いよ」

 あまりの剣幕に真美子はびっくりした。

 「え・・・そうなの・・・でも、このバッグ、限定だし・・・てっきり・・」

 「違うって言ったら違うの!・・・それより今日は就職祝いの日、決めるために来たのよ。私も辰夫くんも美登里姉さんの旦那もGW中だったらいつでもいいから。5月の休み決める時にGW中に1日だけお休み貰ってちょうだい。家の用事とか上手いこと言って。
じゃあ、頼んだわよ」

 そういうと佳美はバッグを掴んで出て行ってしまった。

 呆然とする真美子を残して。

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