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官能小説もどき

フルタイムで働きながら官能小説家としてデビューも狙っているかみやなぎです。ひとまずの目標は毎日更新です。

「ボトル」⑨

「…ええっ!?」

「あの時、林先生から俺の携帯に電話あって、挙動不審な女の子がいてて、商品を盗ってるようだって。店もよっぽどのことがないと万引きは捕まえないんだけど、話聞いたらどうも秋山さんっぽい。だから、捕まえて俺が帰るまで事務所にいれといてって頼んだんだ」

ええ~、どうしてそんなことを。

「だって、チャンスだと思ったから」

「チャンスって、何のチャンス?」
田辺くんの言っていることが解らず聞き返した。

「…だからぁ、秋山さんと親しくなるチャンスだって」


えっ?


「前の同窓会の時にこっちに住んでるって聞いて、ずっと気になったんだ。でもちょっと遠いなあ、彼氏いてるよなあ絶対、とか思っていたら秋山さんの近くに店できるって聞いたから、店長になります!そこいきます!って希望したんだ。」

「え?でも、転勤するまで彼女いてたんでしょ?」

そう、たしかほんの数時間前に田辺君はそう言っていたはず・・・

「あ、前の彼女は就職する時に別れたんだ。同窓会の少し前かな。それ以来誰とも縁がなくってね。同窓会で秋山さん見ちゃったし。秋山さん、彼氏と別れたの最近だって言っていたから、俺も最近別れたってことにしといたほうがいいかなと思って・・・」

なんと…これは全て田辺くんの計画だったのか…

んんっ?じゃ酔って爆睡していたのは演技だったのか?

「酔っ払って寝てしまったのは計算外だったな~。まさか秋山さんがあんなに酒強いとは思わなかった」


「でも、今酔ってるようには見えないけど?」

わたしの頭を撫でながら田辺くんは言う。
「俺、酔いつぶれても20分ほど寝たら大丈夫。目、覚めたら秋山さんの部屋だったから驚いた~。彼氏いないって言ってからコレってチャンス?って思ったから焦ってしまった。…ごめん。…怒ってない?」


地見目でちょっと草食系な田辺くんがここまで行動力があることに驚いた。
そんなに行動的なのに、あの優しいキスもできるんだ、と心も身体も鷲摑みにされたみたいに
感じていた。


「で、こんな事したあとで言うのもナンだけど」

田辺くんは天井に向けていた顔をわたしに向けて、

「俺と付き合って・・・くれない?」


二人裸でベッドの上での告白。わたしは、田辺くんの胸に顔をくっつけて

「…はい、こちらこそお願いします」

って言っていた。


「はぁぁ~。あー、良かったー」

ギュッと抱きしめられた。わたしは今まで足りていなったものがなんとなくわかったような気がした。



「秋山さん、明日二人ででかけようか?今度こそ俺がおごるから」


わたしはふふって笑うとやっぱり明日は来て欲しいなって思った。



これからしばらくは『夜のお供』は必要ないな。アソコに納まるべきモノは空っぽのボトルじゃない。熱くて、硬くて、中身のあるもの。

一人ではとうてい満たされないものを、二人なら満たすことができそうな気がした。



                                    -完ー



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