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官能小説もどき

フルタイムで働きながら官能小説家としてデビューも狙っているかみやなぎです。ひとまずの目標は毎日更新です。

「ボトル」⑦

「珍しいね~大概は女の子がべロンべロンで男が送るからねー。おねーちゃんは逆お持ち帰りだな。がはは」

 タクシーの運転手さんが楽しそうに笑う。いままでいっぱい泥酔の女の子とお持ち帰り男を乗せたんだろうなあ。しかし私はほぼ素面。横には真っ赤な顔をして寝息を立てている田辺君・・・

「お持ち帰りでもこんなに酔っ払っていたら役に立ちそうもないですけど」

わたしは酒に強いのでお持ち帰りされたことないけと、酔っ払った女の子をお持ち帰りする男は面倒くさいことをするのだなあと思った。そこまでしてエッチしたいのか。

「がはは!そりゃそうだ、役立たずだな!」

タクシーの運転手さんがかなり大きな声で笑っていたのに、田辺くんはやっぱり寝ていた。


タクシーを降りてから部屋に行くまでがまた大変だった。運転手さんには「頑張れよう!」と声援をうけたが、全く頑張りようがない。わたしが男で田辺くんが女の子ならこの後の行為に期待することもできるけど。

 なんとか部屋に上げ、ベッドに寝かした。

 はあ~何やってんだか、わたし。
 
 どっと疲れが押し寄せてきた。田辺くん爆睡中。寝息が聞こえる。

 仕事お疲れなのかな?

 独りで新しい土地で大変だろうな。

男の人の寝顔をみたのは久しぶりだ。あまりにも無防備な寝顔にキスしたい衝動があったけど、抑えてガマンした。そんなことしたらお持ち帰り男と一緒になってしまう。でも昨日の妄想が思い出され勝手に下腹部がうずきだす。いや、こんなに酔っていたら立つ物も立たないだろうなと妙に冷静になってみたり。

「う…うん…」田辺くんがうごいた。

「田辺くん?起きた?大丈夫?」

肩を持って揺り起こそうとしたとき、いきなり田辺くんはわたしの腰に両腕をまわし、体をだきしめた。

「あっ!」
ギシッ、

ベッドが軋む。下腹部と胸がキュンとしてジュンってなる。

「…ん、秋山…さん、いい…に…おい~」

…寝ぼけている。さっきのときめきを返せと思いながら体を離そうしたが、うん?意外に力強い。体が動かなかった。

「田辺くん、酔っ払ってるよ。あんまりぎゅっとすると苦しい…」

 わたしの胸は田辺くんの顔あたりにきている。やばい。ドキドキする。
酔っているからか、田辺君の吐息が熱い。一気に血液が胸の先に集まるのがわかる。

 「田辺君、あ・・・酔ってるよ。ね、離して・・・」

 「秋山さん、ちょっと…重い…かも」

はあ~!?なんていうことを!

「でも~こうすればあ、重くな~あい」
そう言うと田辺くんはわたしの腰を引き寄せベッドの上で半回転した。わたしが下で田辺くんが上。「ぁあん」予想外に大きな声がでて自分でもびっくりした。

「そんな大きな声を出すお口はふさがなくっちゃ」

 田辺くんの顔が迫ってくる。

 チュッ



 えっ?


 田辺くんは小鳥のようなキスをした。はじめは唇に、そして頬、おでこ。何か暖かいキス。ほんの少しだけしか触れていないのに体中の力が抜けてくる。

でも唇が耳に触れたとき、わたしのなかで一気に熱いものが溢れてきた。





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