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官能小説もどき

フルタイムで働きながら官能小説家としてデビューも狙っているかみやなぎです。ひとまずの目標は毎日更新です。

「初めては先生と」5

 トオルは時計を気にしていた。真理子先生を送っていった父親の帰りが遅いからだ。日付が変わりそうな時間になってきている。広げていたテキストを閉じ、シャワーの準備を始めた。明日のテスト対策は完璧だ。そもそも高校3年の大事な時期にあんなことさえなければ第1志望の大学に合格できていたはずなのだ。

 不合格のショックではないが、しばらくは何もする気が起きなかった。予備校にはかろうじて通ったがテストはボロボロ。見かねた父親が家庭教師を連れてきた。それが真理子先生だった。その時はなぜ女なのか疑問に思ったが、それは父の親心だったのか、それとも策略だったのかもしれない。どちらにせよ真理子先生のおかげでトオルは身心ともに穏やかでいられるようになった。無茶な「お願い」を真理子先生が望んで叶えてくれているとは思っていないが、せめて受験まではこの状態でいたいと思っていた。

 着替えを持って1階に行こうとしていた時、玄関のドアが開く音がした。

 (あれ?親父か?車の音は聞こえなかったが・・・)

 そうは思ったが、声をかけてみた。

 「遅かったな。心配してたんだ・・・あっ・・」

 玄関にはトオルの良く知っている女が立っていた。

 「・・・ただいま・・・トオルちゃん・・・」

 「千恵さん・・・」

 千恵はトオルの義理の母だ。「あんなこと」があってから父親と千恵の間がぎくしゃくし、ここ3ヶ月は別居状態になっていた。父親がいない時に千恵と2人きりになるのはヤバイな、とトオルは身構えた。

 「・・・和明さん、いる?」

 歳の割りには若く見えた千恵だったが、疲れているのかこころなしか青ざめていた。
新しい母親ができて手放しで喜べる歳でもなかったトオルだが、それでも美しい母親ができたのは嬉しかった。でも今の千恵は・・・

 「今、俺の家庭教師を駅まで送っていってる。もうすぐ帰ってくると思うけど・・・」

 和明の不在を知ると、千恵は困ったような顔をした。千恵もトオルと2人でいるのは落ち着かないのだろう。
 そのとき、車のエンジン音がしてきた。

 「あ、帰ってきたんじゃないかな。俺、風呂入ってくるから・・・」

 そういうとトオルは千恵を玄関に残し、浴室へ行った。後ろでドアが開く音がして和明と千恵の声が聞こえた。小さな声で何を話しているかはわからない。聞きたくもなかった。

 どうしてこんなことになってしまっているのか、トオルはシャワーを浴びながら考えてみた。あの時の泣きじゃくる千恵と、トオルを見る父の悲しそうな顔を思い出すたびにやはり自分が悪かったのだろうか、と。


 
 
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