「なんなんですかあ、これ」
1枚を手に取り、視線を落とした瞬間、陽一の頭の中は真っ白になった。
店の制服を着ている男女が後背位で繋がっている。背中側から撮られた写真で二人の顔は映っていないが、誰かは見る人が見ればすぐにわかるだろう。
陽一と相田の痴態だった。
「……ど、どうしてこれを」
口が渇いて上手く喋れない。背中に冷たい汗が流れる。
「お前さあ、夢中になっててドア開いたことも気づかないでやんの。せっかくお前と彼女を会わせてやろうと思って探してたんだよ。いやあ、しかしいいもの見せてくれて。お礼言わなくちゃ。ありがとう」
写真は数枚あった。どれもドアから陽一たちに気づかれないように撮られたもので、顔は映っていない。しかし、どの写真にも陽一と相田の下半身が写っており、行為が終わった後、体が離れた時も撮られていた。
「これ、なかなかいいだろ?ほら、股からたらーって垂れてるの。ああ、やべぇ、立ってきた」
チーフの声はやたらと明るい。それがかえって陽一に恐怖を感じさせていた。
「……これ、どうして……」
「お前、さっきからおんなじことしか喋ってないじゃん。ちょっとパニクってんのか?」
チーフの言っているように陽一の頭は混乱していた。こんな写真をわざわざ本人に見せるのは脅すことの何者でもない。狙いはなんだ?やっぱり祐美か?それとも金か?
「その写真とデータやるから、お前の女とやらせろよ」
予想通りのことをチーフは言った。
「そ、そんなの駄目に決まってるじゃないですか!」
「へー、そうなの?じゃあ、これ明日にでも店にばら撒こうかなあ。いや、それともお前の女の会社に送ってもいいんだぜ?それとも相田さんのところのほうがいいか?」
なんてこった。
今になって陽一は自分のしでかした過ちの大きさに気づいた。相手が独身ならまだ祐美に浮気を責められるだけで済むが、相田は既婚者だ。相田にも迷惑をかけるし、下手をすれば相田の旦那に訴えられかねない。
写真をつまんでいる指先が震え始めた。
「いや……それは、困ります……」
陽一は両膝に手をつき、深々と頭を下げた。
「すいません!それは困ります!」
チーフが金といえば金を用意する気でいた。
「なに?お前、彼女は大事にしたいし、お前自身も無事でいるつもりなの?それは都合よすぎってもんじゃないかい?」
「すいません!金、金なら用意しますんで」
「ふざけんなよ!俺が金目的だと思ってんのかよ!」
ものすごい声が陽一の頭に降り注いだ。
「すいません!すいません!」
どうすれば……俺はこの先ずっとチーフに脅されるのか?祐美には……相田さんにも……
両膝に額をつけたまま、まとまらない考えがぐるぐると巡っていた。
「……お前の彼女が駄目なら、こいつ、この女とやらせろ」
え?
陽一が顔をあげると、チーフの指は股から白いものを垂らしている女を指していた。
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